◆日本史大戦略◆ 西関東・北東北の史跡を踏査し歴史を考察!

第13回 出羽国の建置と住民の移住

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 和銅元年(708)、朝廷は越後国内に出羽郡を設置したが、それが発展し、和銅5年(712)9月23日、太政官の奏上により出羽国を置くことを許可した。そして10月1日には、陸奥国から最上・置賜二郡を割いて出羽国に附けた。3年前の佐伯石湯らの出羽方面の征討の結果、出羽方面の経営は安定し、建置へとつながったのだろう

 

 

 

 翌和銅6年(713)12月2日、陸奥国に丹取郡を置いた。現在の大崎市附近だ。さきに信太郡の存在について触れたが、信太郡のさらに北に丹取郡を置いたことにより、当該地域の支配が一層進んだことがわかる。

 

 

 

 翌和銅7年(714)10月2日、尾張(愛知県)・上野(群馬県)・信濃(長野県)・越後(新潟県)などの200戸を出羽の柵戸に移住させた。当時の1戸は20人から25人なので、4000人から5000人の移住になる。さらに、翌霊亀元年(715)5月30日には、相模(神奈川県)・上総(千葉県)・常陸(茨城県)・上野(群馬県)・下野(栃木県)の富裕な民1000戸を陸奥に移住させた。今回は2万人以上というかなり大規模な移住だ。

 

 

 

 霊亀元年(715)10月29日、陸奥の蝦夷邑良志別君宇蘇弥奈(おらしわけのきみうそみな)が、「親族が死んで子孫が数人しかおらず、狄徒に侵略されるおそれがあるので、香河村に郡家を設けて編戸に入れと欲しい」と申請した。また、蝦夷須賀君古麻比留(すがのきみこまひる)は、「先祖以来定期的に陸奥国府に昆布を納めているが、国府が遠くて難儀しているので閇村に郡家を建てて欲しい」と申請し、朝廷は両者の申請を許可た。

 

 

 

 香河村の位置は、谷川健一氏によると、現在の奥州市で後に胆沢城が築城される場所の近くであるという。そして、宮城県登米市の遠流志別石神社は、邑良志別君の祖神を祀る神社だということだ。また、閇村は、現在の閉伊郡だが、閉伊郡の当初の中心は現在の岩手県宮古市であると考えられる。閉伊地方に郡家が建てられたということは、この時点で東北地方太平洋側の海沿いは、岩手県中部の閉伊地方にまで、点々と湊ごとに日本の支配が及ぶことになったといえる。ただし岩手県域の内陸部への進出はまだ後のことだ。

 

 

 

 去る和銅2年(709)に陸奥方面の蝦夷討伐に派遣された巨勢朝臣麻呂が、霊亀2年(716)9月23日に「出羽国を建てて数年経ったがまだ人民が少なく狄徒も馴れていないので、近くの住民を出羽に移し、狂暴な狄を教え諭し、地を利したい」と言上した。それにより、陸奥国置賜・最上二郡および信濃・上野・越前・越後の百姓各100戸を出羽国に移住させた。ここでは、「陸奥国置賜・最上二郡」といっているが、両郡は既に出羽国に移管されているので、置賜・最上方面から日本海側への移住と理解したい。また、翌養老元年(717)2月26日にも、信濃・上野・越前・越後の民100戸を出羽の柵戸に配置し、養老3年(719)7月9日には、東海・東山・北陸の民200戸を出羽柵に入植させた。

 

 

 

 養老2年(718)5月2日、上総国の平群・安房・朝夷・長狭の四郡を分離して安房国を建て、陸奥国の岩城・標葉・行方・宇太・亘理・常陸国の菊田の6郡を割いて岩城国を建て、さらに白川・石背・会津・安積・信夫の5郡に、常陸国の多珂郡の郷210戸を菊多郡としたものを合わせて石背国を建てた。なお、岩城国と石背国は数年後元に戻り(陸奥国に合併され)消滅する。

 

 

 

 8月14日、出羽と渡嶋の蝦夷87人が1000頭の馬を貢納して位を授かった。1000頭という数はとてつもないので、数については疑わしいが、都の人が驚くような相当な数の馬が納められたのは確かであろう。

 

 

 

 養老4年(720)正月23日、渡島の津軽の津司(つのつかさ)である諸君鞍男(もろきみのくらお)ら6人を靺鞨(まつかつ)国(中国東北部から沿海州の地域に居た複数の民族)に遣わして、その風俗を視察させた。

 

 

 

 2月29日には、九州の太宰府から奏言があり、それによると、隼人が叛乱を起こして、大隅(鹿児島県)国守の陽侯史麻呂(やこのふひとまろ)を殺害したということだ。朝廷は3月4日に隼人征伐軍の人事を発表する。隼人の蜂起は次回述べる奥州で発生した大事件とともに、女帝元正天皇の朝廷に、そして何よりも一般の民衆に対し重い負担をかける事件だったが、叛乱を起こした隼人側が一方的に悪ではないことは、いわずもがなことである。

 

 

 

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【参考資料】

  • 『日本書紀(下) 全現代語訳』 宇治谷孟/著 1988年 
  • 『天翔る白鳥 ヤマトタケル』 小椋一葉/著 1989年 
  • 『新版[古代の日本]9 東北・北海道』 1992年
  • 『県史3 岩手県の歴史』 細井計・伊藤博幸・菅野文夫・鈴木宏/著 2009年
  • 『ものが語る歴史25 蝦夷とは誰か』 松本建速/著 2011年
  • 『アイヌ学入門』 瀬川拓郎/著 2015年
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